2005年 08月 20日
世の中にソーラーカーレースの何たるかを理解してる人は極めて少ない。 レース自体もほとんど無いのだが なんせ 競技人口が圧倒的に少ない。 ということで ソーラーカーレースって?何が面白いの? とほとんどの方は思うはず。 だいたいが、はじめから「面白い」と思って取り組んだ人も稀なのがこの業界で、 やってる人を手伝っていたり、しょうがなく応援に行ってその魔物に取り付かれてしまうのだ。 そもそも太陽エネルギーを使って走行するソーラーカーはガソリンエンジン車に比べ 使えるエネルギーが圧倒的に少ないのでスピードそのものが大したことが無い。 ましてや加速感などというものは望むべくも無い。 世界で最も早いソーラーカーは時速170km/hくらい出るらしい (うちのソーラーカーでもギリシャでは130km/hくらい出した。) が太陽エネルギーのみで巡航できるのは100~110km/hくらいで、 800W制限クラスなら60km/hくらいしか出ないのである。 「そんなとろい車のレースなんて何が面白いんだ?」ということになるのだが、 やりはじめると「こんなに面白いものは無いのでは?」と思うくらいに面白いのだ。 普通のレースでも頭は使うのだろうが、ソーラーカーは考えるレベルがすごく深い。 しかも競技の歴史が浅いのでいろんな工夫が出来るところが魅力になる。 普段何気なく乗ってる車に比べても構造ははるかに簡単なソーラーカーであるが、 コンペティションレベルのソーラーカーのデザインというのはかなりの知識を必要とする。 材料の強度、シャーシデザインによる応力の集中はどうなるか? 太陽電池の発電効率に、空力性能、コーナリング性能、重量バランス、軽量化、etc それぞれの要素が複雑にトレードオフの関係にあるのでバランス良く成り立たせるのは非常に難しい。 このデザイン段階でダメだといくら綺麗に作ってもまったくダメである。 さらに全体のデザインが良くても各パーツのデザインが上手く出来ないとこれまたダメである。 さらに組み込むパーツはコンペティションレベルのものはそれなりに高価で800wく制限クラスでも 太陽電池とモーターだけで300万円くらいかかってしまい、 無制限クラスの車になるとウン千万から5億円くらいもする人工衛星用のソーラーパネルを載せている例もある。 したがって個人レベルのプライベータで参戦するのは極めて難しい競技だ。 無制限クラスは金の勝負に近いものがあるので面白いのは制限クラス。 制限クラスだと使用されるパネル、バッテリー、モータ等はほぼイコールになるので、 車体設計や、エネルギーマネージメントで勝負が決まってくる。 車体性能が圧倒的にものを言うのだ。 この車体性能とは主に空力性能と、車両重量、コーナリング性能の組み合わせになる。 空力を重要視しすぎると発電効率が低下したりトレッドが狭くなりコーナリング性能が劣るデザインになりやすい。 コーナリングを重要視しすぎてシャーシ剛性を高めると重量が増えすぎる。 といったように「あちらを立てれば、こちらが立たない」といった感じになるのだ。 お金のあるチームは風洞実験など行ないながら煮詰めていけるが、 我々のような財力の無いチームはせいぜい厚紙で1/10スケールのモデルを作ってイメージを固めていくくらい。 他チームを含めた車体デザインと成績を数多く頭にインプットして、 経験と感によりデザインしていく。 レーシングカーのデザインがそうであるようにソーラーカーもその時代時代の強い車のデザインに似たものが増える。 他のチームのマネはしたくないが、冒険もしたくないというのがデザインするときの本音で 結果が出るまで本当にドキドキする。 手作りのソーラーカーはカウル部だけでも大の大人4,5人毎週末やって最低半年かかる。 レースは1年に1度か2度なのでデザインが悪いと1シーズン完全に無駄になる。 総合力とバランスが問われるデザイナー リスクが大きいだけに上手く行ったときの喜びも大きい。
by blogsvx
| 2005-08-20 16:39
| Solar Car
|
アバウト
カテゴリ
以前の記事
最新のトラックバック
Fisherのプロフィール
車やバイク、さらにはインラインローラーや折り畳み自転車など車輪のついた乗り物が好き。
車よりもバイクのほうが得意と思ってるのだがバイクは持っていない。 ワインデイングをリズミカルに走るのが好きで結構日本全国広範囲に出没する。 ブギーやシュノーケルなどマリンスポーツも好きで熱さには強いが寒さに弱い。 Fisherの由来はウインドサーフィンやってた頃 見知らぬおっさんに”漁師”と間違われたことで仲間内からそう呼ばれるようになった。 お気に入りブログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||